平成20年10月


〈和田振り薬
 シマヤ真鍋薬局家伝の薬としてある「和田振薬」は、江戸後期に作られ、私の祖母が健在の時に聞いた話では、祖母の姑がたくさん作って売っていたそうです。米櫃のような物の中にあらかじめ作っておいたものを、竹筒を切ってそれを枡代わりにしてすくっては布の小さな袋に入れて糸で縛って商品化していたようです。
 当時は「首より上のくすり」という別称で、今で言う自律神経失調症もしくは産後婦人の「血の道症」と言われる、不定愁訴に飛ぶように売れていたそうです。
 私も以前作ってみたことがありますが、なかなか薬を細かく刻むのが難しく、刻みすぎて粉になったり、大小粒揃いにはなかなかならず、刻みが大きすぎては振り出しにはならず、細かくなりすぎてはだめ、ということで家内工業としてはしんどいものでした。「和田振薬」の和田は、真鍋家が真鍋島から四国に渡ってきたのが愛媛県の和田浜だったからだ…とか言ってましたが、私がその後漢方の研究をするようになってからは、和田降り薬の処方構成から判断して、当時江戸で高名であった「和田東郭」の名前から和田を拝借したものに違いないと思っています。
 和田東郭は折衷派の神経症の治療を得意とした名医です。わたしも現在和田東郭が盛んに用いたと言われている「四逆散」が大好きで、しばしば用いています。
(シマヤ真鍋薬局 十代目当主 真鍋 立夫)