平成18年10月

〈千金丹製造の押型〉
 讃岐千金丹は大正から昭和初期にかけて全国的に知られ、寺田虎彦の随筆「物売りの声」にある薬売りの声が松島琴松堂の行商人のそれであることは、つとに知られている。松島琴松堂薬局を訪れ店内に足を踏み入れた途端、彫られた文字に純金で「琴松堂」とある厚さ5cmで畳一畳もあるケヤキの一枚板、その堂々たる看板に圧倒された。
 今に残る、千金丹を作る時の金属製の「押型」(12cmX24cm)を手に取ると3kgがずしりと重い。厚さ5mmほどの板状に成型した千金丹に、この押型を押し付けて碁盤状の筋を入れ、手で必要量をチョコレートのように割ることができるようにするものである。松島琴松堂の千金丹は、金箔を貼り付けていたので金色の表面に、松島のMと松葉の菱形の模様があるのが特徴であった。看板、押型、それに百年の歴史、いずれも重かった。(増井武彦記)



金比羅参道石段中腹にあった明治期の松島琴松堂の店舗兼工場
宣伝目的の引札に残る唯一の資料より